寺子屋ごはん、歩み出す

〜2022.10.5編集〜

 

突然歩けない日が来た

今から4,5年前、私は腰痛の悪化で1年ほど歩くこともままならない状態でした。いつ治るのか?このまま一生治らないのか?長女は高校受験生、次女は小学4年生、長男小学2年生。当時は出口の見えない日々に、とても大きな不安に包まれていました。

 

周囲の負担

突然自分が動けなくなると、家族に負担がかかっていることに負い目を感じる人は少なくありません。はたから見れば、まずは家族に頼めば良いのにと思うような「些細なこと」ほど家族に頼みづらい、という心情になることもわかりました。近くの限られた友人に度々頼ってしまう状況も心苦しくなりがちです。

 

福祉(制度) の谷間

中等度難聴で生れた息子の補聴器を購入する時も、切迫早産になっても義祖母の介護施設を探さなければならなかった時も「福祉の谷間」を感じました。どんなに困っていても行政の支援は対象外であることがしばしばあります。判断基準が社会モデルではなく医療モデルだからです。子どもに手もお金もまだまだかかる子育て世代には民間サービスは料金が高くて利用を躊躇します。動けないことで移動手段の支出が増え、掃除ができず汚れていく家が気になり、いろんな不安が治療の妨げになることを身をもって実感しました。

 

成瀬お助けたい 

私がやっと普通に家事もできるようになった頃に「成瀬お助けたい」という地域ボランティアが発足したことをポストのチラシで知りました。あの頃にこの活動があったならどれだけ安心だっただろうか。今の私でもちょっとの時間でサポートできることがあればと思い、すぐにサポーター登録して今も活動させて頂いています。成瀬お助けたいとのご縁は、のちに、寺子屋ごはんが芽吹くときの大きな助勢になりました。

 

家族でちがうマンパワー     

家族に介護や病気など不意な事態が起きた時、支えられるマンパワーはそれぞれの家庭で全く違います。家族間の微妙な心理的距離がある場合もあり、外から見たマンパワーと内実が違う事もしばしばあります。家族にはいろんな形があります。

      

余剰を循環するだけで

でも地域にはそれを補い合える力が有り余るほどあるのではないか?それは地域の人たちが「無理なくできる」コト、モノ、時間を「ちょっとずつ持ち寄る」ことで補い合うことができるのではないか?地域にはその力が有り余っているのではないか?成瀬お助けたいや地域活動をするいろんな方との関わりの中でそんなことを常々感じていました。

 

まわる工作城      

成瀬お助けたいの活動を始めたのと同時期に、自宅の一室で子ども達の自由工作を見守る「まわる工作城」を開城しました。この活動が「多世代交流で循環」していくといいな。廃材や余剰物を工夫して工作する「モノの循環」を大切にしたいな。という想いを込めて「まわる」という言葉を選びました。

      

予約3か月待ち

大人も子どもも自由に工作をするのは大好きで自由工作は予約を3ヶ月待ってもらう人もいる状況でしたが、その合間にも様々なイベントや制作、地域外の地域活動にもチャレンジしていました。しかし多忙になり、子どもたちと楽しく過ごすためのまわる工作城の時間は、楽しむより時間に追われるようになっていました。そして「地域外の活動」と「地域内の活動」と「自分の生活」がそれぞれ繋がっていないことにとても違和感を感じるようになっていました。

 

思い切って休城

多い月で1ヶ月に60人の来城者。今のやり方ではみんなを受け入れられない…。考えた末、まわる工作城を楽しみにしてくれている子ども達には申し訳ないけど年内で一旦休城して今後の展開をじっくり考えることにしました。これからの活動は居住地域に絞ろう。活動と生活を限りなく近づけよう。そして次こそ地域の多世代交流に繋げる仕組みにしよう。アンテナの方向を定めて休城中の3ヶ月間は日々模索していました。

 

地域で             

こどもは無料、予約なしで気軽に工作体験できるようにしたいなぁ(自由工作の間口を広くしたい)    

地域のご年配方の知恵や技術を子どもたちに伝えてほしいなぁ(伝承しないともったいない)

工作の後、みんなでご飯作って食べてさようならしたいなぁ(ごはんを一連の流れにした活動が好き

どうやったらできるかなぁ、とあれこれ考えていました。

      

陽だまりカフェ      

一人で何度も練った構想を少しずつ周囲に聞いてもらったり相談しました。理想は地域の多世代交流とごはんを一緒にした活動。ごはんは無理でも月に数回無料工作ができる場所はないかと近隣を探しはじめた矢先、近所で「みんなの居場所 陽だまりカフェ」が建設中であることを「成瀬お助けたい」の山ちゃんから聞きました。キッチンもあるよ、と。陽だまりカフェオーナーの安達さんに「寺子屋ごはん」の構想をお話しさせていただくと、賛同していただき、トントン拍子に話が進みました。

 安達さんは「成瀬お助けたい」後援の南第三高齢者支援センターの職員さんでもあり、成瀬お助けたいのサポーターでもあります。山ちゃんは寺子屋ごはんの相談をするうちに立ち上げメンバーになってくださいました。

                  

寺子屋ごはん

場所がある事で一気に現実味が帯び、よく工作城に来ていた子ども達のお母さんに今後の展開を話してみると、「以前から子ども食堂に興味があった」ととても興味を持ってくれました。しかももう1人!では「ごはん」の方は2人に任せた!こうして動き始めたのが《寺子屋ごはん》です。

 

賛同が後押し        

初めは、私個人の経験によるただの妄想でしたが「私も同じようなことを考えていた」「一緒にやってみたい」「お手伝いしたい」「応援するよ」と賛同してくれる方々があちこちにいました。みんなの言葉が、一歩踏み出すのをためらう私の背中を何度も何度も押してくれました。

 

寺子屋ごはんサポーター募集

寺子屋ごはんのサポーターさんを募るため、まず初めに協力を呼び掛けたのは「成瀬お助けたい」のサポーターグループLINEです。その時にたくさんの方が応援してくださったことがとても励みになりました。その後、地域の方へ向けた説明会を5月に陽だまりカフェで開き、賛同してくださった地域の方が「寺子屋ごはんサポーター」として登録してくださりました。その後も徐々に増えて現時点で36名のサポーターさんが楽しみながら関わってくださっています。しかし、サポーターとして登録されていなくても、寺子屋ごはんに心を寄せてくださっている地域の方はたくさんいます。なので私たちはいつも「豊かな地域のゆりかご」の中で、安心して伸び伸びと活動することができています。

 

地域が一つの多世代大家族のように

《寺子屋ごはん》は大家族のおじいちゃんやおばあちゃんが孫に接するように一緒に楽しく過ごす場にしていきたいと思っています。なので大人が一方的に教える、という場ではありませんし何かの成果を求める場でもありません。時には見守り、時には見守られながら、共に歩む気持ち” を心に、のんびり楽しく過ごす時間でありたいと思っています。

 

〈寺子屋〉

地域の方々に宿題を見守ってもらったり、工作、編み物、裁縫、囲碁、小物の修理など地域の方々と時間を共にする中で、自然に生活のスキルが身につくといいな。※寺子屋での工作は端材やご寄付で頂いた材料のみでやりくりします。

別紙「寺子屋ごはんの楽しい組織図」で寺子屋クラブを説明します。

 

〈ごはん〉

寺子屋ごはんで提供する「ごはん」は手の込んだ何品もの料理を出したりはできませんが、軽食という軽いおやつのようなものであればよいという考えではなく、寺子屋ごはんらしいごはんを提供したいと思っています。

一般的な子ども食堂に比べて提供時間が始まりも終わりも少し早いですが、それは、おやつ感覚で食べる人もいれば、夕食までのつなぎにする人もいたり、夕食替わりにする人もいたり自由であればよいと思っています。そして、子どもが一人でも食べに行ける安全な時間を大切にしています。少しでも、おなかとこころが満たされるごはんが作れたらいいなと思っています。


食材はみなさまの多大なご寄付、ご協力を頂きながら運営して行く予定です。


(順不同)

フレンズ様お米、野菜

クロイツェル様ハム

やさいのナイトウ様野菜

デンマークベーカリー様…パン

近隣の畑をされている地域の方々野菜

 

多世代交流による循環       

◼︎子どもにとって、ものづくりのコツや生活の知恵が身につくことは生きる楽しさに

◼︎仕事などで保護者が不在がちな放課後の子ども達の居場所に

◼︎子育て世代は地域で子どもを見守ってもらえる安心の場に

◼︎シニア世代は新しい出会いや役割が生きがいや介護予防に

◼︎地域内で顔見知りが増えることは防犯や有事の際の備えに     

 

活動の循環がそんな一助になれたら幸いです。     

 

リーダー達も多世代  

立ち上げメンバーの4人はリーダーといいます。            

代表:高木。あおぞら木工リーダー。全体総括。

副代表:佐藤。ごはんリーダー。管理栄養士。感受性豊かな4人の子どものお母さん。末っ子はまだ3才。     

副代表:相澤。ごはんリーダー。一番年下だけどしっかり者の3人の子どものお母さん。末っ子は同じく3才。

会計:山垣。かみ工作リーダー、ぬいものリーダー。全体フォロー。地域活動の経験豊富な頼れる先輩ですが35才だと言い張るので後輩です。佐藤、相澤の子どもたちもリーダーの一員。とっても自慢の多世代リーダー達です。

私以外の3人は寺子屋ごはんで初めて繋がった人たちです。 結成から5か月、大変な時もありましたが本当に自慢の仲間です。      

 

最後に

介護、子育て、突然の病気、突然の事故。誰でも必ず直面することです。本来は想定内なのに想定外として生活が組み立てられている昨今。たった数人の小さな家族で全てを完結させようとするから無理が生じるのではないだろうか?親戚が遠方にいる家庭でも、片親の家庭でも、地域の中に第二第三のお父さんお母さん、第二第三おじいちゃん、おばあちゃん、お兄ちゃん、お姉ちゃんがいたらどうかな?地域に第二第三の娘や孫が地域にいたら遠い親戚も安心ではないかな?

《地域》を《家族》としてみたら、福祉の谷間は埋められるんじゃないかなぁという思いが私の活動の原動力です。

 


この様な経緯で《寺子屋ごはん》は歩み出しました。

 

サポーターの方々、活動中にふらっと寄ってくださる地域の方々、そこに来る子どもたちによってこの活動が続いていくことを願っています。

             

多世代の顔見知りが増えて、道端やスーパーで手を振り合う光景が増えるといいな🍀